資料記号

marega collection

標題

マリオ・マレガ資料

年代

1612-1959

主年代

1612-1868

年代注記

文書の年代は1612-1868と、1930-1959とに2分される。

記述レベル

fonds

数量

レコード数 約14,647点

物的状態注記

江戸時代の文書は、その半分ほどがマレガ氏によって整理され、新聞などに包まれ、番号が与えられ管理されていた。マレガによって番号が与えられなかったものは基本的に未整理である(1953年のバチカン移送では、3つの箱を用意し、番号を付与した整理済分、無番号の未整理分、史料集に収録した分に荷造りされた)。2013年のマレガ・プロジェクト開始時は、バチカン図書館の保存袋21袋に収納されて保管されていた。その後、バチカン図書館追加分(A22・23・25)、サレジオ大学図書館所蔵(A24)、バチカン文書館所蔵(A26)が加えられた。

出所/作成

マリオ・マレガ。ほぼ4つの史料群からなる。多くは日本の臼杵藩宗門方を原出所とする。他に古書店などからの購入文書および知人などからの提供された資料などがある。また、マレガ神父自身を直接の出所とする原稿・書簡・メモなど、さらに1950年代後半から1960年代のバチカン図書館での整理に関わるカード・新聞などが見られる。

履歴

マリオ・マレガ (Mario Marega)は、1902年9月30日イタリア北東部フリウリ地方ゴリツィアに誕生。第一次世界大戦中にウィーンで中等教育を終え、修練期を経て、トリノのバルサリチェ高等学院で学び、1924年教皇庁立サレジオ大学神学部に入学、1927年司祭に叙階、1928年同大学神学部を卒業し、神学博士号を取得した。1929年10月ヴェネツィア港を出航、神戸経由で12月16日、宮崎に到着し、神学院で教鞭をとる。1931年12月からは大分教会に移り、『信仰の根本』(1933年)、『カトリックは答へる』1・2(1933・34年)などを日本語で出版する。1933年には海星幼稚園(大分市)の設立に関わり、1935年4月に大分教会主任となる。宣教・教育活動の傍ら、1938年『古事記』のイタリア語訳本を出版、チマッティ神父によって、同年に教皇ピオ11世に献じられた。また、キリシタンに関係する古文書を収集し、研究に従事し、1942年には『豊後切支丹史料』が刊行された。さらに、キリシタン史跡の発見にも努め、これらの成果は、地元紙やカトリック新聞に報じられた。第二次大戦中の1945年7月16日、大分教会は空襲で焼失するが、収集した古文書類は前年に宮崎に疎開され難を逃れた。7月末にはイタリアの降伏により、神父らは身柄を拘束され、熊本県の栃木温泉に送られた。戦後すぐに『続豊後切支丹史料』(1946年)の出版に向け努力し、これを刊行した。1947年、イタリアに帰国、シチリア島のパレルモに伝道、その際には日本の史料の展示会を開催した。翌年には教皇ピウス12世に接見した。1948年、再度渡日命令が出て、米国を経て東京に来日し、大分教会に着任した。1949年頃に東京の碑文谷教会に移り、1950年には調布サレジオ神学院、1951年には同地のサレジオ短期大学の教師に就任、1953年収集した文書群および史料集刊行の際の原稿などをバチカン図書館に寄贈した。1953年から58年まで大分県の臼杵教会に移り、1959年に東京碑文谷に戻った。1963年、サレジオ会修道女が運営する東京赤羽の星美学園短期大学専任教授に就任、日本のキリスト教や仏教・哲学に関する研究を続けた。この間、1961年『落穂集』(伊語)を、1968年『キリシタンの英雄たち』(伊語)を刊行した。1962年3月イタリア騎士隊勲章を在日イタリア大使館にて受章。国際東方学者会議などに参加し、研究者との交流にも努めた。1974年イタリアに帰国、1978年1月30日ロンバルディア州ブレッシアで没した。

1930年代にマレガが取得した臼杵藩宗門方文書群は、マレガ収集文書の大半を占めること、また、マレガの原稿・メモ・書簡などもこの文書群に関わることに鑑み、原出所である臼杵藩宗門方について触れておく。豊後国海部郡臼杵(現在の大分県臼杵市)には、大友義統(宗麟の子)改易後、豊臣系の福原直高が入り、福原が豊後府内(現大分市)に転出した後、太田一吉が6万5000石で入った。1600年の関ヶ原の戦い後は、戦いにおいて西軍から東軍に転じた稲葉貞通が美濃国郡上八幡から5万石で転入した。外様大名である。藩主は貞通-典通-一通-信通-景通-知通-恒通-菫通-泰通-弘通-雍通-尊通-幾通-観通-久通と続き、久通の代に幕末を迎えた。領知は豊後国海部郡のうちに97か村、大分郡のうちに39か村、大野郡のうちに143か村であった。臼杵藩では寛永11年(1634)以来、宗門改の実施と起請文の作成・提出、五人組の編制によってキリシタン統制を強化してきたが、その後も豊後国内では潜伏キリシタンが発見された。臼杵藩では寛文5年(1665)に高宮・岡部・伊藤の3名を宗門奉行に任じ、3人体制で、臼杵藩における踏み絵の実施、類族の管理、宗門改を行う体制が整備され、幕末まで続いた。元禄2年(1689)の宗門奉行の役料は禄米20俵、下僚(宗門下役)2名であった。江戸時代の文書では、他に大分市ハレルヤ書店などからの購入分がある。

関係地

イタリア北東部フリウリ地方ゴリツィアに誕生。ウィーン、トリノ、ローマ、宮崎、大分、臼杵、東京目黒区碑文谷

役職等

宣教師(サレジオ会)、臼杵藩宗門方(宗門奉行)

伝来

1953年にマリオ・マレガ氏が寄贈(大半を占める臼杵藩宗門方文書は1930年代にマレガが譲渡を受けた)

入手源

マリオ・マレガ

範囲と内容

マレガ資料群は、「01.宗門方」、「02.諸資料」、「03.マレガ」、「04.その他」の4つに大別できる。「01.宗門方」は、 臼杵藩宗門方を出所とする17~19世紀のキリシタン関係文書群(1万1938レコード余)であり、マレガの入手年次は1938年頃である。類族改めの一環で村方などから提出された出生届、婚姻届、死亡届などや役所事務、幕府への届などが多数見られる。「02.諸資料」は、 古書店からの購入と見られる18~19世紀の諸資料(413レコード)であり、大分の「ハレルヤ書店」からの購入分(岡藩関係)、長崎の元山元造からの購入文書については領収書・購入資料リストも一部現存するが、詳細は不明である。出所を基本にまとまりを示すならば、 01.臼杵藩関係(御納戸・御奥・郡奉行・その他)、 02.臼杵藩士(戸上家・生野家・諸家)、03.臼杵藩領、04.岡藩関係、05.府内藩関係、06.大村藩関係ヵ、07.杵築町・藩文書、08.生地・宗近組文書、09.大坂町奉行、10.駿河国安倍郡腰越村、11.出羽国最上郡泉田村奥山家文書、12.銀札、13.その他などである。出所特定が困難なものもあり、引き続きの検討を要する。「03.マレガ」は、マレガ自身を出所とする記録類であり、著書原稿・研究メモ・調査ノート・自伝マンガや資料整理関係などである。とくに保存袋A1、A2の資料は、マレガが日本からバチカン図書館に送る際、ブリキ缶2個を用意し、『豊後切支丹史料』『続豊後切支丹史料』に収録した史料を取り纏めたものであり、原稿や作業メモなどが大量に見られ、他の文書のまとまりとは大きな違いとなっている。「04.その他」は資料群受け入れ後の1950年後半から60年代のバチカンでの整理の過程で付与されたものである (56レコード)。

追加受入情報

A22はバチカン図書館別施設で管理されたもののと、2014年10月サレジオ神学院チマッチィ資料館(日本東京都調布市)から譲渡を受けたものである。A23はバチカン図書館が過去に登録を終えたもの、1949年マレガが教皇ピウス12世に献じたもの(A23.8)などである。A24はローマ・サレジオ大学図書館所蔵「マレガ・コレクション」のうち臼杵藩宗門方関係文書などを修復などのために、2016年5月、バチカン図書館が受け入れたものである(439レコード)。この文書群は1981年東京目黒修道院で発見され、その後調布のサレジオ神学院で管理されていたが、2005年頃に溝部脩神父がサレジオ大学図書館へ送ったものである。傷みのあるものも多く、受入れ段階には目録も未作成であった。A25はバチカン美術館図書館が所蔵したが移管され、2018年段階にはバチカン図書館が管理する。A26はバチカン文書館が所蔵したが、2020年同図書館に移管された。これらは1938年マレガの上司であるチマッティ神父がバチカンに持参した34点の一部であり、日本語資料は26点、他の8点はラテラノ博物館(バチカン布教・民族博物館の前身)の機関誌『Annali Lateranensi』第3号に掲載されたマレガの論文「大分地方におけるキリスト教の名残」(Memorie cristiane della regione di Oita)に利用され、写真も掲載されたが、現在、所在不明である。

整理方法

バチカン図書館との共同での概要調査を通じて、管理番号付与・保存措置・修復・デジタル画像作成を行い、日本国内で文書目録・メタデータ記述を行った。

利用条件

二次的利用においては、バチカン図書館への申請を要する。

使用言語

日本語、伊語、英語、ドイツ語

物的特徴および技術要件

虫損・破損が甚だしいものも見られるが、2013年から2019年にバチカン図書館によって一定の修復がなされた。

原本の所在

バチカン図書館

出版物
マレガ自身によるものに『豊後切支丹史料』(1942年)、『続豊後切支丹史料』(1946年)。1938年『古事記』(伊語)、1961年『落穂集』(伊語)を、1968年には『キリシタンの英雄たち』がある。また、マレガ・プロジェクトによる主要なものに青木睦・アンジェラ ヌーニェス ガイタン編『Preservation and conservation of Japanese archival document』(『バチカン図書館所蔵日本資料の保存と修復』、バチカン図書館出版部、2019)、マレガ著書『豊後切支丹史料』正・続(1943・1946)に収録される翻刻史料を原史料をもって校訂した松井洋子・佐藤孝之・松澤克行編『甦る豊後切支丹史料』(勉誠出版、2020)、『国文学研究資料館紀要アーカイブズ篇』第12号(2016)、同第14号(2018)でのマレガ資料群に関する特集、大友一雄・三野行徳編『バチカン図書館所蔵マリオ・マレガ資料-概要と紹介-』(2021年)、大友一雄・太田尚宏編『バチカン図書館所蔵マレガ資料の総合的研究』(2022年)などがある。
収蔵機関名称

バチカン図書館

更新日

2021/1/12

記述者

大友一雄

参照用画像