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13巻 無事志有意

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傍記なし


俊寛△△△△△△△△△△△ 白宝舎△晋家作
今ハむかし。中宮御産の御祈によつて、非常の大赦行ハる。
鬼界が嶋の流人丹波少将成常、平判官康頼二人赦免にして
船にのせて(三十一オ)こぎ出す。俊寛一人リ跡に残り、
磯ばたに伏まろびいる所へ、海人の千鳥かけ来り、てゝ様
よ。せなや兄丈ハどこへいきめしたときけバ、ヤア千鳥か。
二人ハおゆるしあつて都へかへる。早く呼かへしやといへ
バ、アイと、千鳥か岩の上へかけ上りて、コンナむかふの
ふね引

伊勢参り△△△△△△△△△△△△ 紫雄作
丁稚子供より合、コレ竹松どん。おいせ様の太&をうつと、
うまい物をたんと喰とよ。ホンニか。そんなら亀吉どん。
おいらもぬけ参りをして、だい+をうたふと、そこらの
心ざしある人をたのみ、ろぎん少&こしらへ、お師の名ハ
聞およべバ、なんなく山田のお師をたづねて、お頼(三十
一ウ)申ませふ。御師の手代出、どこからござつた。アイ。
江戸蔵前の伊勢やから参りました。太&をうちとうござり
ます。コレハよふ御出。旧冬参つた時おはなしもなかつた
が、存寄らぬ事。跡から大ぜい御出か。イヽヱ、私共二人
リ。ハテなといふ内、銭百文つゝ紙に包、モシ、是で太&
を打とふござります。ナニ太&を。此子ハ気がちがつたか。
コレ、そつちの旦那の太々ハ五十両、ざつとして二十五両
だ。とんだ事をいふといへバ、竹松どん。どうせう。モシ、
そんなら此百で、太&がならずハ、きんかんでも

百夜車△△△△△△△△△△ 水魚亭△魯石作
今ハ昔。小野小町ハ美人の名高く、哥ハ世にしれる所也。
されバ恋(三十二オ)したわざる物なし。中にも深草の少将、
思ひのたけをしらせんと、雨のふる夜も雪の夜も通ひて、
車の橸に其数を書て、九十九夜通ひしかど、此恋叶わずし
て、思ひ死せられしと云取沙汰。女中達これを聞、小丁の
おそバへ参り、少将さまにハ終におはて被成ましたといへ
バ、小町聞て、局を呼給ひ、コレ、其惚帳を出して、少将
どのゝ所ハ消ておきや

稚名△△△△△△△△△△△△ 坂彦作
是も今ハ昔。ある人の出生の男子、おさな名を非人に付て
もらへば、そく才延命也と聞て、早+非人をよび寄る。
傍記あり


俊寛△△△△△△△△△△△ 白宝舎△晋家作
今ハむかし。/中宮(ちうぐう)/御産(こさん)の/御祈(おんいのり)によつて、/非常(ひぜう)の大/赦(しや)/行(おこな)ハる。
/鬼界(きかい)が嶋の/流人(るにん)丹波少将/成常(なりつね)、平判官/康頼(やすより)二人/赦免(しやめん)にして
船にのせて(三十一オ)こぎ出す。/俊寛(しゆんぐわん)一人リ/跡(あと)に残り、
/磯(いそ)ばたに/伏(ふし)まろびいる所へ、/海人(あま)の/千鳥(ちとり)かけ来り、てゝ様
よ。せなや/兄丈(あにんぜう)ハどこへいきめしたときけバ、ヤア千鳥か。
二人ハおゆるしあつて/都(ミやこ)へかへる。/早(はや)く/呼(よび)かへしやといへ
バ、アイと、千鳥か/岩(いハ)の上へかけ上りて、コンナむかふの
ふね引

伊勢参り△△△△△△△△△△△△ 紫雄作
/丁稚(でつち)/子供(ことも)より/合(あい)、コレ竹松どん。おいせ様の/太&(だい+)をうつと、
うまい物をたんと/喰(くふ)とよ。ホンニか。そんなら亀吉どん。
おいらもぬけ参りをして、だい+をうたふと、そこらの
心ざしある人をたのみ、ろぎん少&こしらへ、お師の名ハ
聞およべバ、なんなく/山田(やまだ)のお/師(し)をたづねて、お頼(三十
一ウ)申ませふ。御師の手代出、どこからござつた。アイ。
江戸/蔵前(くらまへ)の/伊勢(いせ)やから参りました。/太&(だい+)をうちとうござり
ます。コレハよふ御出。/旧冬(きうとう)参つた時おはなしもなかつた
が、/存(ぞんし)寄らぬ事。跡から大ぜい御出か。イヽヱ、私共二人
リ。ハテなといふ内、/銭(せに)百文つゝ/紙(かミ)に/包(つゝミ)、モシ、/是(これ)で太&
を打とふござります。ナニ太&を。此子ハ/気(き)がちがつたか。
コレ、そつちの/旦那(だんな)の太々ハ五十両、ざつとして二十五両
だ。とんだ事をいふといへバ、竹松どん。どうせう。モシ、
そんなら此百で、太&がならずハ、きんかんでも

百夜車△△△△△△△△△△ 水魚亭△魯石作
今ハ昔。/小野(おのゝ)小町ハ/美人(びじん)の名/高(たか)く、哥ハ世にしれる所也。
されバ/恋(こい)(三十二オ)したわざる物なし。中にも/深草(ふかくさ)の/少将(せう+)、
思ひのたけをしらせんと、/雨(あめ)のふる/夜(よ)も/雪(ゆき)の夜も通ひて、
車の/橸(しゞ(ママ))に/其数(そのかづ)を書て、九十九夜通ひしかど、此/恋(こい)/叶(かな)わずし
て、思ひ/死(しに)せられしと云取/沙汰(さた)。女中達これを聞、小丁の
おそバへ参り、少将さまにハ/終(つい)におはて被成ましたといへ
バ、小町聞て、/局(つぼね)を呼給ひ、コレ、/其惚帳(そのほれてう)を出して、少将
どのゝ所ハ/消(けし)ておきや

稚名△△△△△△△△△△△△ 坂彦作
/是(これ)も今ハ昔。ある人の/出生(しゆつせう)の男子、おさな名を/非人(ひにん)に付て
もらへば、そく才/延命(ゑんめい)也と聞て、/早(そう)+非人をよび/寄(よせ)る。