俊寛△△△△△△△△△△△ 白宝舎△晋家作 今ハむかし。中宮御産の御祈によつて、非常の大赦行ハる。 鬼界が嶋の流人丹波少将成常、平判官康頼二人赦免にして 船にのせて(三十一オ)こぎ出す。俊寛一人リ跡に残り、 磯ばたに伏まろびいる所へ、海人の千鳥かけ来り、てゝ様 よ。せなや兄丈ハどこへいきめしたときけバ、ヤア千鳥か。 二人ハおゆるしあつて都へかへる。早く呼かへしやといへ バ、アイと、千鳥か岩の上へかけ上りて、コンナむかふの ふね引 伊勢参り△△△△△△△△△△△△ 紫雄作 丁稚子供より合、コレ竹松どん。おいせ様の太&をうつと、 うまい物をたんと喰とよ。ホンニか。そんなら亀吉どん。 おいらもぬけ参りをして、だい+をうたふと、そこらの 心ざしある人をたのみ、ろぎん少&こしらへ、お師の名ハ 聞およべバ、なんなく山田のお師をたづねて、お頼(三十 一ウ)申ませふ。御師の手代出、どこからござつた。アイ。 江戸蔵前の伊勢やから参りました。太&をうちとうござり ます。コレハよふ御出。旧冬参つた時おはなしもなかつた が、存寄らぬ事。跡から大ぜい御出か。イヽヱ、私共二人 リ。ハテなといふ内、銭百文つゝ紙に包、モシ、是で太& を打とふござります。ナニ太&を。此子ハ気がちがつたか。 コレ、そつちの旦那の太々ハ五十両、ざつとして二十五両 だ。とんだ事をいふといへバ、竹松どん。どうせう。モシ、 そんなら此百で、太&がならずハ、きんかんでも 百夜車△△△△△△△△△△ 水魚亭△魯石作 今ハ昔。小野小町ハ美人の名高く、哥ハ世にしれる所也。 されバ恋(三十二オ)したわざる物なし。中にも深草の少将、 思ひのたけをしらせんと、雨のふる夜も雪の夜も通ひて、 車の橸に其数を書て、九十九夜通ひしかど、此恋叶わずし て、思ひ死せられしと云取沙汰。女中達これを聞、小丁の おそバへ参り、少将さまにハ終におはて被成ましたといへ バ、小町聞て、局を呼給ひ、コレ、其惚帳を出して、少将 どのゝ所ハ消ておきや 稚名△△△△△△△△△△△△ 坂彦作 是も今ハ昔。ある人の出生の男子、おさな名を非人に付て もらへば、そく才延命也と聞て、早+非人をよび寄る。
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