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6巻 露新軽口はなし

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傍記なし

かるたさばくりして、夜あけ七日の朝かへり、いねぶりゐ
けるに、母おやの申けるハ、五郎八、是五郎八とおしけれ
バ、おつと、おしてうけましやうといふて、ぜんを引よせ
ける。いや是、みそじやといひけれバ、てミそ共にうけた
といふた。( オ)

十三△初むまの事
稲荷の社人、御そせう申上られけるハ、正月晦日、二月朔
日、ミむまと、去年も今年もつゞき、何とも気のどく成事
にて御座候。中の馬を初むまにあそばされ下され候へとね
がひ申さるれバ、朔日の馬にも参らせて、初馬を三度せう
といふ事かと仰らるれバ、いや、さやうにてハ御座なく候。
はじめのむまハすて候て、中のむまをと申上れバ、いや
+、すてむまハ御法度でならぬと仰られた。

十四△楊貴妃があらハれた
さる所の中ゐの女、美人ハ柚の香ひがするときゝはつり、
二六時中たもとにゆをたやさずいれて持( ウ)いたり。み
せの若イ衆いづれも、おなつ。わがミハいつもゆのにほい
がする。いかさま美人さうなといハれけれバ、しや、何い
ハんすとて袖をふる拍子に、くだんのゆ、ころりとおちけ
れバ、扨もかなしや。やうきひがあらハれたといふた。

十五△金を食にする出家
しゆしようがほにて欲ふかき長老有。常※病者気にて、
熱おきつしていられけるに、有時、心易キ旦那参り、内証
へはいり、長老様の御目にかゝる。御そばに、方&よりの
志、ふせ共あまた有けれバ、だんな申けるハ、どうしても長
老様じや。われらハ年中身をくだいてあがけ共、かけに斗
成てすたるが、和尚様ハねて御座つてもようとれますると
いハれば、長老の仰に、どうしても( オ)善光寺の尺迦の
まねハならぬ。ねていても思ふやうにとれぬ。剰くハね
バよけれどといはれた。( ウ)
傍記あり

かるたさばくりして、夜あけ七日の朝かへり、いねぶりゐ
けるに、母おやの申けるハ、五郎八、是五郎八とおしけれ
バ、おつと、おしてうけましやうといふて、ぜんを引よせ
ける。いや是、みそじやといひけれバ、てミそ共にうけた
といふた。( オ)

十三△初むまの事
稲荷の社人、御そせう申上られけるハ、正月晦日、二月朔
日、ミむまと、/去年(コゾ)も/今年(コトシ)もつゞき、何とも気のどく成事
にて御座候。中の馬を初むまにあそばされ下され候へとね
がひ申さるれバ、朔日の馬にも参らせて、初馬を三度せう
といふ事かと仰らるれバ、いや、さやうにてハ御座なく候。
はじめのむまハすて候て、中のむまをと申上れバ、いや
+、すてむまハ御法度でならぬと仰られた。

十四△楊貴妃があらハれた
さる所の中ゐの女、美人ハ柚の香ひがするときゝはつり、
二六時中たもとにゆをたやさずいれて持( ウ)いたり。み
せの若イ衆いづれも、おなつ。わがミハいつもゆのにほい
がする。いかさま美人さうなといハれけれバ、しや、何い
ハんすとて袖をふる拍子に、くだんのゆ、ころりとおちけ
れバ、扨もかなしや。やうきひがあらハれたといふた。

十五△金を食にする出家
しゆしようがほにて/欲(ヨク)ふかき長老有。常※病者気にて、
/熱(ネツ)おきつしていられけるに、有時、心易キ旦那参り、内証
へはいり、長老様の御目にかゝる。御そばに、方&よりの
志、ふせ共あまた有けれバ、だんな申けるハ、どうしても長
老様じや。われらハ年中身をくだいてあがけ共、かけに斗
成てすたるが、和尚様ハねて御座つてもようとれますると
いハれ/((けれ脱カ))ば、長老の仰に、どうしても( オ)善光寺の尺迦の
まねハならぬ。ねていても思ふやうにとれぬ。/剰(アマツサへ)くハね
バよけれどといはれた。( ウ)