かるたさばくりして、夜あけ七日の朝かへり、いねぶりゐ けるに、母おやの申けるハ、五郎八、是五郎八とおしけれ バ、おつと、おしてうけましやうといふて、ぜんを引よせ ける。いや是、みそじやといひけれバ、てミそ共にうけた といふた。( オ) 十三△初むまの事 稲荷の社人、御そせう申上られけるハ、正月晦日、二月朔 日、ミむまと、去年も今年もつゞき、何とも気のどく成事 にて御座候。中の馬を初むまにあそばされ下され候へとね がひ申さるれバ、朔日の馬にも参らせて、初馬を三度せう といふ事かと仰らるれバ、いや、さやうにてハ御座なく候。 はじめのむまハすて候て、中のむまをと申上れバ、いや +、すてむまハ御法度でならぬと仰られた。 十四△楊貴妃があらハれた さる所の中ゐの女、美人ハ柚の香ひがするときゝはつり、 二六時中たもとにゆをたやさずいれて持( ウ)いたり。み せの若イ衆いづれも、おなつ。わがミハいつもゆのにほい がする。いかさま美人さうなといハれけれバ、しや、何い ハんすとて袖をふる拍子に、くだんのゆ、ころりとおちけ れバ、扨もかなしや。やうきひがあらハれたといふた。 十五△金を食にする出家 しゆしようがほにて欲ふかき長老有。常※病者気にて、 熱おきつしていられけるに、有時、心易キ旦那参り、内証 へはいり、長老様の御目にかゝる。御そばに、方&よりの 志、ふせ共あまた有けれバ、だんな申けるハ、どうしても長 老様じや。われらハ年中身をくだいてあがけ共、かけに斗 成てすたるが、和尚様ハねて御座つてもようとれますると いハれば、長老の仰に、どうしても( オ)善光寺の尺迦の まねハならぬ。ねていても思ふやうにとれぬ。剰くハね バよけれどといはれた。( ウ)
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